今月の主題 癌治療の最前線
トピックス
癌転移の抑制
螺良 英郎
1
,
山下 喬
2
,
八木 正人
2
Eiro Tsubura
1
,
Takashi Yamashita
2
,
Masato Yagi
2
1徳島大学医学部・第3内科
2徳島大学医学部・内科
pp.1044-1045
発行日 1982年6月10日
Published Date 1982/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217798
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癌患者における転移
癌患者の死因一癌死は多元的要因に基づく,癌そのものの拡がり,すなわち浸潤,転移は癌死の最大要因であるが,担癌状態の進展による代謝異常や免疫異常は癌悪液質として間接的に合併症で死因につながっている.これらのなかでも転移(metastasis)は癌患者の病期とも関連し,診断および治療上の大きい指標とされている.転移は癌が悪性であるという代名詞ともなっており,その抑制に対して基礎的ならびに臨床的研究も行われているが,きわめて困難である.癌転移の抑制には直接癌細胞を除去,抑制しようとする手段と癌細胞には直接抗癌効果を示さないが,間接的に転移巣の形成を防止ないし抑制する2つの手段がある.転移の抑制を目的とした系統的な臨床成果はなく,各種癌で観察された転移抑制の散発的な成績しかみあたらない.動物実験による転移の形成と抑制に関する最近のデータも参照しつつ転移抑制の今後の検討について述べることとする.
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