今月の主題 癌治療の最前線
免疫療法
monoclonal抗体と癌治療
葛巻 暹
1
Noboru Kuzumaki
1
1北海道大学医学部付属癌研究施設・遺伝部門
pp.1022-1023
発行日 1982年6月10日
Published Date 1982/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217790
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腫瘍が生体によって拒絶される場合は,主として細胞性免疫の働きによるという証拠が動物実験で多く得られている.これに対して液性免疫がどれほどの効果を持っているのか疑問であるとされてきた.にもかかわらず血清抗体による癌の免疫治療が試みられてきたのは,その調整や保存の容易さと,抗体の持つ特異性のためである.しかし従来の血清療法では,用いる血清が異種の動物由来であれば吸収操作が必要となり,同種の血清でも一般に抗体の力価が低く,腫瘍抗原に対する抗体としての特異性も厳密なものとはいえなかった.これらの欠点が,いまやルチーンの抗体作製法となった細胞融合法によって得られるmonoclonal抗体によって克服された.しかし,monoclonal抗体単独では腫瘍の完全な治療を期待するのは無理であるという成績が大勢を占め,monoclonal抗体を抗癌作用のある物質のcarrierとして用いるという観点から臨床への応用が具体化されつつある.
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