今月の主題 癌治療の最前線
免疫療法
癌免疫研究の現状
橋本 嘉幸
1
Yoshiyuki Hashimoto
1
1東北大学薬学部・衛生化学
pp.1016-1017
発行日 1982年6月10日
Published Date 1982/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217788
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近代癌免疫の発展は1960年代初期における近交系動物の開発に伴う同系癌,さらには自己癌に対する宿主の移植免疫研究に礎を有するものと思われる.これらの研究により,化学発癌剤誘発癌およびウイルス癌には正常組織細胞には表現されていない癌特異抗原が存在することが明らかにされ,いく多の研究を通して,癌の特異抗原性の概念が確立されてきた.これに平行して,癌に抗原性があれば細菌やウイルスとのアナロジーにより,免疫学的な癌の治療法が可能かもしれないという予測のもとに,種々の形の癌免疫療法が実験的に追求され,やがて臨床の場にも持ち込まれるに至った.
一方,以上のような癌に対する免疫現象を司る宿主側の因子は何かについての解析も,上の諸研究と並行して行われ,キラーT細胞,マクロファージ,K細胞,NK細胞といった宿主細胞の関与や血清因子の効果,さらには基礎免疫学の知見の拡大による抑制性細胞や因子の発見が行われてきた.
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