綜説—今月の臨床
癌免疫療法の現状
峠 哲哉
1
,
山口 佳之
1
1広島大学原医研外科
pp.1043-1050
発行日 1994年8月20日
Published Date 1994/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901612
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Ⅰ.はじめに
癌免疫療法は4半世紀前の菌体製剤や植物由来の多糖類の開発を嚆矢として,1980年代の遺伝子工学の進歩によるサイトカイン/モノカインの量産化により,癌治療の一角を占めるに到った.加えて,癌抗原の特異的なモノクローナル抗体の作製と応用によるミサイル療法の可能性が叫ばれ,免疫療法への期待感は高まった.確かに,動物実験では癌の完全退縮,生存日数の延長がみられ,免疫療法の効果は認められた.一方,臨床面においては,手術補助療法に組み込まれ,予後の延長効果からもその有用性が評価されてきた.しかしながら,当初期待されていた進行癌に対する効果は必ずしも十分とはいえず,効果発現のために,biological response modifier(BRM)剤に対する感受性,腫瘍の抗原性などの腫瘍側要因,さらに作用機序からみて宿主側の要因を解析することの必要性があげられた.しかしながら,腫瘍免疫ネットワークの複雑な絡み合いのなかで,作用機序の異なるこれらBRM剤の至適な投与条件を求めることは大変難しく,その検討が鋭意進められているのが現状である.
こうした流れに加えて,免疫療法の新しい展開もなされており,本報においてはBRMの応用,モノクローナル抗体,遺伝子治療を中心に固形癌に対する免疫療法の最近の動向をまとめてみた.
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