臨時増刊特集 臨床医のためのCTスキャン
骨盤
正常解剖
pp.2282-2283
発行日 1981年11月20日
Published Date 1981/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217511
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CT診断に際し,骨盤の横断面の正常解剖に精通する必要がある.CTがあくまで組織のX線吸収値差をもって画像を作製している以上,軟部組織からなり,ほとんど吸収値に差のない骨盤各臓器間の識別は本来不能である.しかし,正常者の場合,るいそう者,小児などを除けば各臓器の間に脂肪組織が介在し,ある程度まで識別することができる.ところが対象となる腫瘤性疾患では,極端なるいそうで十分な脂肪組織の介在がなかったり,また骨盤内腫瘍のため骨盤の正常構造が乱されていることが多く,臓器の同定すら困難となる.婦人骨盤における巨大な卵巣腫瘍がよい例で,骨盤内臓器は本来固定が堅固でなく,配列は容易に乱れるため,泌尿器系臓器(膀胱,尿管),女性生殖臓器(腟,子宮),消化器系臓器(小腸,大腸)を各々識別するには種々の工夫が必要である.
泌尿器系臓器は経静脈性水溶性ヨード化合物を用いると識別は容易である.女性生殖臓器のうち,卵巣についてはよい方法が得られていないが,腟,子宮では,指標となるもの(ネラトン管,コンレイガーゼ,タンポンなど)の挿入が試みられている.また,膀胱の壁の厚さを明らかにするため,尿,生食,電気,オリーブ油などで膀胱を充満させる場合もある,それぞれ,どの方法が最適か結論はでていないが,可能な限りartifactの少ない方法をとることが必要である.
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