臨時増刊特集 臨床医のためのCTスキャン
膵臓
膵炎
pp.2231-2236
発行日 1981年11月20日
Published Date 1981/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217498
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急性膵炎の多くはCTの対象とはならない.これは臨床生化学的データのみで十分診断がつくことに加え,約半数ではCT上まったく所見を欠くためである.急性膵炎の典型像は膵のびまん性腫大と濃度の低下である.
CTが偉力を発揮するのは,高度膵炎に続発する膵周囲への浸潤の拡がり,膿瘍,仮性のう胞の形成をとらえることである.膵後面には前腎筋膜(Gerota's fascia)があり,腎と境され,膵側はanterior pararenal spaceと呼ばれる.一方,前方は腹膜で網のうに囲まれ,左側方は下行結腸に隔てるものなく移行する.したがって高度の膵炎が生ずると,浸出液,出血壊死はこのスペースに充満する.逆にこの像を見れば,この部の腫瘤は膵炎に由来するものとみなしてよい.図21は腹部中央から左側に拡がる腫瘤があり,これは先に記した膵周囲の空間に相当する.この内部には種々の大きさの低濃度部があり,さらにその中に多数の小円形の高度な低濃度影が見られ,これはガスといえる.すなわち,膵炎に続発した膵膿瘍である.
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