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薬物の有害反応(ADR,J1)
米国では,すべての入院のうち3~7%がADRによるものである.また,入院期間中10~20%でADRが生じ,そのうち約10~20%が重度なものである.ADRの発生率および重症度は,患者の特性や薬物に関連する因子により変動し,高齢者においてはその発生率は高く,発生するADRはより重度であるのでとくに注意が必要である.
ADRとその薬物との関連性については症例報告,ケースコントロール研究あるいはコホート研究などの観察研究の結果によって構築される.研究デザインのエビデンスレベルから判断すると,症例報告よりもコホート研究,ケースコントロール研究の疫学的な手法を用いることが根拠としての精度は高いが,疫学的研究は時間を要することや経費面で実行するのは難しい.このため現実には数例の症例報告をもとに報告されている.したがって,ADRの正確性を確保するには,その因果関係が適切に評価されているかが重要な鍵となる.ADRとその薬物の因果関係の評価には,Naranjo ADR probability scale(J2),Jones algorithm,WHO-UMC Causality Categoriesなど1~3)が一般な方法である.また,WHO Bayesian Confidence Propagation Neural Network (BCPNN)やFDA Gamma-Poisson Shrinker Program(GPS)などは,過去の副作用報告のデータを用い,Baysian法などの確率論からADRとその薬物の因果関係の評価を推定することが可能ではあるが,ADRと薬物の関連要素に主眼が置かれて,患者の因子はまったく考慮されていない点を考慮しなければならない.
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