臨床薬理学 薬物療法の考え方・7
薬物の有害反応(1)
中野 重行
1
Shigeyuki NAKANO
1
1愛媛大学医学部・薬理学
pp.1605-1610
発行日 1981年9月10日
Published Date 1981/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217334
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薬物療法の目ざすところが,「病める人」の治療を成功させることにあることはいうまでもない.しかし,この目的を達成するための手段として使用される薬物は,生体内で種々の薬理作用を生ずる化学物質であるために,期待して使用しようとする薬理作用以外の,治療上不必要であったり好ましくない作用がどうしても出現しうることになる.薬物により生ずるこのような好ましくない作用は,「薬物の有害反応(adverse drugreactions)」と呼ばれ,眠気のような一過性の症状から,肝障害のような臓器の非可逆性の障害,さらにはペニシリンによるアナフィラキシー(anaphylaxis)のように致死的で重篤なものまで多岐にわたっている.基本的には,すべての薬物は有害反応を起こす可能性があるとの認識が必要である.
薬物を処方する医師たる者は,薬物の有害反応とは一体何なのか,有害反応の生ずるメカニズムはどうなっているのか,有害反応の出現頻度はどのくらいか,有害反応が生じたときどのようにしてそれを見つけ出すか,有害反応が出現したならばどのように処置したらよいのか,といった点について明確な知識と考えをもっていなければならない.しかし,それにも増して重要なことは,薬物の有害反応の出現をどのようにしたら予防することができるかを、真剣に考えることであろう.
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