今月の主題 脳循環の基礎と臨床
脳循環障害の臨床
後大脳動脈領域梗塞症
秋口 一郎
1
,
亀山 正邦
1
Ichiro AKIGUCHI
1
,
Masakuni KAMEYAMA
1
1京都大学医学部・老年科神経内科
pp.1734-1735
発行日 1981年10月10日
Published Date 1981/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217362
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後大脳動脈領域梗塞症posterior cerebral artery territory infarction(以下PCAI)は,中大脳動脈など,他の領域の梗塞症にくらべ,多種多様の臨床症候を示す1〜5).その理由としては,①PCA領域には視床,中脳・脳幹,海馬などの臨床的に重要な構造が多く存在すること,②後頭葉のみでなく側頭葉や頭頂葉も環流域に含まれること,③血行動態に各種のvariationがあり個体差が大きいこと,などが挙げられる.したがって梗塞巣の位置と大きさは,動脈閉塞の部位とWillis輪,側副血行の動態により決定される.もし側副血行が十分であれば,後交通動脈の近位部の閉塞でもまったく無症候の場合もある.後交通動脈より遠位部の閉塞でも,前・中大脳動脈からの側副血行が十分であれば,障害は比較的軽度ですむ1).このようにPCAIの血行動態臨床症候は複雑であるが,最近,CTスキャンの普及により梗塞巣を客観的にとらえることが可能となった.したがって従来よりも部位診断,症候学的分析が容易となり,その頻度も脳梗塞中,8.4%4),7.1%(一側PCAIのみ)5)と,さほど稀でないことが明らかにされている.
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