今月の主題 心エコー法の現況
基礎知識
心エコー図のおとし穴—誤診と限界
吉川 純一
1
Jun-ichi YOSHIKAWA
1
1神戸市立中央市民病院・循環器センター内科
pp.1329-1331
発行日 1981年8月10日
Published Date 1981/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217276
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「超音波病」の発生
超音波診断法は,非観血的に即時に心内動態や形態を知りうる方法として,1970年代に入ってから急速に臨床に取り入れられ,いまや循環器疾患の診療に欠くことのできない検査法となってきた.しかし一方では,表示された画像を教科書や論文の教えるままに判読し,その内部に潜むトリックに気づかないまま心エコー図診断が下される傾向が増してきた.このように心エコー図所見を過信した場合,困ったことに「超音波病」または「心エコー図病」なる一種の誤診が生まれることになる.さらに,超音波の物理学的特性や装置・探触子の分解能,被検者側の条件(たとえば肥満や肺気腫など)などを考えた場合,心エコー図診断に一定の限界が存在することは当然のことといえる.
超音波病は主にMモード心エコー図診断に際して出現しうるが,断層図診断においても出現しうる.この超音波病を防ぐには,検者の経験や検査時の注意,努力も重要であるが,何よりも大切なのは心エコー図診断の限界を悟ることと思われる.
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