今月の主題 心不全の動向
心不全の治療
β促進剤
上羽 康之
1
,
伊藤 芳久
2
Yasuyuki UEBA
1
,
Yoshihisa ITO
2
1神戸大学医学部・第1内科
2神戸大学医学部・内科
pp.234-235
発行日 1981年2月10日
Published Date 1981/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217037
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- 文献概要
心不全発生時,交感神経活動の亢進をきたすことは,カテコールアミンの血中濃度,尿中排泄量の増大1)より明らかであり,それが心機能の賦活に有利に作用することは,交感神経作用抑制剤であるレセルピン,β遮断剤を用いた場合に,臨床像の増悪をみることより支持される2).この交感神経作用物質であるカテコールアミンの心脈管系に対する作用効果は,表1のようにα,βの2種類の受容体の刺激効果による.また効果発現の機序については,心筋細胞にあっては,細胞膜のβ受容体に作用し,adenylate cyclase活性を賦活してATPよりcyclic AMPの合成をたかめ,その結果,筋小胞体などからのCaの遊出,利用を促進するとともに,細胞膜におけるCaの透過性をたかめ収縮力の増大が得られる.
それ故,β促進剤を用いた場合には,強力な心収縮力の増強と末梢血管の拡張が惹起されるため,心不全の治療には好適と考えられる.しかし現実には,その使用には種々の制限が存在する.表2はβ促進剤の代表的薬剤であるイソプロテレノールの,心脈管系に対する作用効果を示したものである.すなわち心収縮力の増強のほか,心拍数の増加による心筋酸素消費量の増大,心自動能の亢進による不整脈の発生は,心不全の治療には不利な点と考えられる.
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