今月の主題 心不全の動向
心不全の治療
ジギタリス剤の使い方
佐藤 友英
1
Tomohide SATO
1
1帝京大学医学部・第2内科
pp.231-233
発行日 1981年2月10日
Published Date 1981/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217036
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
薬理作用と作用機序
ジギタリスの心臓に対する薬理作用は,陽性変力作用positive inotropic effectと電気生理学的作用electrophysiologic actionに2大別される.本剤の徐脈化作用と副作用としてのジギタリス不整脈は主としてこの電気生理学的作用による.たとえば頻拍型心房細動にジギタリスを投与すると,房室結節の刺激伝導速度はジギタリスによる直接作用と迷走神経興奮を介する間接作用によって抑制され心室拍数が減少する.さらにジギタリスが過剰になると,心筋自動能亢進,不応期の短縮,興奮性の増大,刺激伝導速度の遅延などが複雑に組み合わさって多彩なジギタリス不整脈が出現する.中枢神経作用は,主にジギタリス中毒の心外性症状(消化器症状や神経症状)として現れる.
本剤の作用機序は現在でも決定的な説はなく不明といわざるを得ない.陽性変力作用(心筋収縮力増強作用)の機序がNaポンプの抑制を介するか否かという点から論争がある.しかし終局的には,心筋細胞内の遊離Ca++を増加し収縮力を増大させることには異論がない.他方,電気生理学的作用の機序としては,ジギタリスのNa++K+ATPase抑制作用がより密接に関与している.このように陽性変力作用と電気生理学的作用の間の詳細な関係については,今後さらに解明されなければならない.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.