臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
XIII.皮膚疾患
色素性母斑ないし黒子 VS 悪性黒色腫
久木田 淳
1
Atsushi KUKITA
1
1東京大学医学部・皮膚科
pp.2146-2147
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216915
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なぜ鑑別が問題となるか
臨床的に黒色を呈する皮膚腫瘍の種類はきわめて多く,これらの腫瘍は色素性母斑(黒子を含む)および悪性黒色腫のごとき色素細胞系列の腫瘍のみでなく,表皮細胞,間質性細胞系列の腫瘍も含まれる.色素性母斑は悪性黒色腫の発生母地として考えられており,色素性母斑と悪性黒色腫の臨床的,病理組織学的鑑別が重要である,とくに悪性黒色腫は他の腫瘍に比して悪性度が高く,診断確定後は1日も早い治療方針の決定が必要である.早期診断の時期を失った症例,または誤まった治療をされた症例は予後がきわめて絶望的になる,またその反対に,良性腫瘍を悪性黒色腫と誤まった場合は不必要な大きな侵襲を患者に与える結果となる.
しかし,皮膚科診療上,黒色腫瘍は皮膚腫瘍のうち最も誤診されやすい疾患である.色素性母斑の臨床的誤診に関する報告によると,色素性母斑と臨床的に診断された551症例中,組織学的検査で診断が適中した症例は338症例で,診断適中率は低く61%で,基底細胞上表腫,脂漏性角化症,有棘細胞癌,色素性神経線維腫,血管腫,表皮嚢腫,悪性黒色腫などが含まれていた.また組織学的診断が色素性母斑であった454症例の臨床的診断は色素性母斑と適中した症例は338症例で,適中率74.4%であった.
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