臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
V.内分泌疾患
尿崩症 VS 心因性多飲症
斎藤 寿一
1
Toshikazu SAITO
1
1自治医科大学・内分泌代謝科
pp.1960-1961
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216831
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なぜ鑑別が問題となるか
尿崩症と心因性多飲症は,いずれも時に1日10lに及ぶ多尿と,100mOsm/L前後の浸透圧をしめす低張尿を主徴としている点で臨床所見は酷似している.しかしながら,両者の成因と治療は互いに逆の関係にあり,とくに治療上の選択を誤まれば危険な病態を招くこととなり,その鑑別は臨床上きわめて重要である.尿崩症は,下垂体後葉より分泌される抗利尿ホルモン(ADH)の欠乏により,腎における水再吸収が低下して発来した多尿が一次的原因であり,その結果として口渇と多飲がみとめられるのに対し,心因性多飲症は心因的強迫飲水が,まず一次的原因としてあり,多尿は水負荷に対する正常な反応であるといえる.尿崩症にあっては脱水に傾き,治療は抗利尿薬剤の補充が主となり,強度の水分制限は脱水と虚脱をきたすおそれがつよいのに対し,心因性多飲症では水過剰の状態にあり,抗利尿薬剤の誤用は危険な水中毒の発生を招くこととなる.
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