今月の主題 感染症—治療の実際
起炎菌別の対策
ウイルス感染症
武内 可尚
1
Yoshinao TAKEUCHI
1
1川崎市立川崎病院・小児科
pp.1505-1507
発行日 1980年10月10日
Published Date 1980/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216703
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ウイルス感染に対する対策にも,種痘の普及徹底からついに痘そうを根絶せしめえた例のように,グローバルな視野からの対策と,先天性にしろ後天性にしろ,免疫不全にある個体がウイルスに暴露されたときの対策といったように,ピンからキリまである.
ヒトにかかわりをもつウイルスは,現在知られているだけでもおそらく300以上はあろう.これらのウイルス感染のすべてがわれわれに問題となるとは限らないが,主要なウイルスに対しても抗ウイルス薬はほとんど存在しない.ウイルスは宿主細胞の代謝サイクルに便乗して増殖するので,仮に試験管内で殺ウイルス的に作用する薬剤が見出されたとしても,それが生体にとって安全であると期待することはきわめて困難である.一方,多くのウイルス感染症は急性病原体消滅型の感染形式をとり,あとには強弱さまざまの免疫を残す.感染形態が重症化することのあるものに対しては,γグロブリンによる受動的予防やワクチンによる能動的予防を考えるとか,それほど重篤な形をとらないものでは,もっぱら対症療法により嵐が過ぎ去るのを待つとか,細菌合併症の予防ないしは治療に中心がおかれる.これらの対策を表1をにまとめてみた.少しく言及すれば.教育というのは一般市民への啓蒙のことを意味するのみならず,医師自身の個々のウイルス感染症に対する理解を深めることがなによりも大切である.
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