特集 ノロウイルス―ウイルス性下痢症
その他のウイルス性下痢症の集団発生事例
2.アデノウイルス感染症・アストロウイルス感染症
森 功次
1
1東京都健康安全研究センター微生物部ウイルス研究科
pp.994-997
発行日 2007年12月15日
Published Date 2007/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101205
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アデノウイルス感染症
1.病原体
ヒトアデノウイルス(Human Adenovirus:HAdV)はアデノウイルス科(Adenovirudae),マストアデノウイルス属(Mastadenovirus)に分類される二本鎖のDNAウイルスで,1953年に扁桃腺炎(adenoids)患者の扁桃腺から分離されたことにより命名された.ウイルス粒子の構造は直径約90nmの正二十面体構造(図1)で,各頂点のペントンベースにファイバーを持つ.HAdVは現在51血清型があり,これらはA~Fの6亜属(subgenus)に分類される.急性胃腸炎に関与するのは,腸管アデノウイルスとも呼ばれているF亜属に属する40型と41型である.稀に他のAおよびC亜属のHAdVも胃腸炎に関与することがある.
2.臨床症状
HAdV感染症は咽頭炎や扁桃炎等の呼吸器疾患をはじめ,咽頭結膜熱や流行性角結膜炎等の眼疾患,また,胃腸炎と多様な病態を示し,亜属により主要症状に差が見られる.F亜属に属するHAdVはヒトの腸管組織で特異的に増殖し,下痢,腹痛,発熱等を引き起こす.HAdVの感染から発症に至る潜伏期間はノロウイルス(NV)より長く,約3日と考えられている.
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