Update '98
アデノウイルス7型感染症
武内 可尚
1
1川崎市立川崎病院小児科
pp.665
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902522
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ヒトに感染するアデノウイルスには47の亜型がある.出血性膀胱炎は11型,咽頭結膜熱は3型,流行性角結膜炎は8型というように,亜型によって特徴的な病像が対応するものもある.呼吸器系感染を生じるのは,1~8,11,12,21型が主であるが,従来の経験では咽頭から分離されるアデノウイルスのうち60%を3型が占めていた.ところが,1996年以降7型が全国的に浸淫し,3歳以下の乳幼児が7型による重篤な肺炎で死亡する事例が各地から報告されるようになった.われわれも昨年1例失った.アデノ7型に対する中和抗体の保有状況を調べてみると,40年以前には流行していたことが明らかであるが,15歳以下の小児はほとんど中和抗体を保有していない.アデノウイルスは塩素濃度0.4mg/l以上で失活するので,プールの消毒には特に留意してほしい.もしアデノ7型でプールが汚染された場合,従来のアデノ3型よりもはるかに強毒であるため,大変な事態が発生しないとも限らない.また,小児病棟での院内感染も生じるので,医師や看護婦は手洗いの励行を普段から心掛けなければならない.ただし,アデノウイルスは脂質を欠くので,石鹸では失活しない.高濃度のアルコールがよい.
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