天地人
色香に迷う
人
pp.1151
発行日 1980年7月10日
Published Date 1980/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216614
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先日ある宣伝誌の編集会議で,この頃は美しい色刷りが当り前になって読者の眼を惹きつけるのが難しくなったので,香水入りのページを作ってみてはどうか,との意見が出た.しかし,ただ香水を紙に振りかけても駄目で,一度活字で刷った後にもう一度インクならぬ"香水"を使って印刷機を廻して刷りあげるのだそうだ。そうすると長い間香水のふくよかな香りが紙について,嗅覚を刺激するというわけである.読者を"色と香"で迷わせ宣伝効果を上げようという魂胆だが,最終的にはこの奇抜なアイデアも実現しなかった.
それにしても,色香に迷わされるのは異性間に限ったことかと思っていたが,どうやらそうでもないらしい.われわれ人間社会のユニセックス化が目立ってきた故であろうか.ところで,人間に限らず,どのような動物の雄も雌の愛をうるために涙ぐましい努力をしている.まず自己を顕示して,自分の存在を相手に知らさなければならない.それにはいろいろな方法があるが,匂いによるコミュニケーションもその一つである.
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