今月の主題 甲状腺疾患診療の進歩
トピックス
LATSからHTSAbへ—Graves病の成因
森 徹
1
Toru MORI
1
1神戸市立中央市民病院・内科
pp.668-669
発行日 1980年5月10日
Published Date 1980/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216504
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Graves病の成因の詳細は今日に至るもなお明らかではない.しかし,本症の病態は血中の甲状腺ホルモン過剰状態による甲状腺中毒症状(頻脈,体重減少,多汗,イライラなど)とともに,びまん性甲状腺腫大,眼症状および皮膚症状(前頸骨部限局性粘液水腫)からなっている.眼や皮膚はともかくも,甲状腺の過形成型の腫大とそれに伴うホルモン過剰分泌を最もよく説明できるのは甲状腺刺激物質の存在である.
1956年Adamsらは本症患者血清中にモルモット甲状腺を刺激する物質LATS(long acting thyroid stimulator)が存在することを報告した.その後このような刺激物質は自己抗体と考えられ,種属特異性があることが明らかとなり,現在ではヒト甲状腺の特異的刺激物質としてHTSAb(human thyroid stimulating antibody)が注目されており,本症はHTSAbに関連した自己免疫疾患と理解される方向にある.以下,今日までのこの面の研究の進歩を概説し,Graves病の成因についての現時点での考察を試みたい.
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