今月の主題 最近の腎疾患の基礎と臨床
腎疾患の病態
尿細管障害―小児の場合
酒井 糾
1
Tadasu SAKAI
1
1北里大医学部・小児腎疾患科
pp.502-504
発行日 1980年4月10日
Published Date 1980/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216472
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はじめに
腎尿細管転送異常は先天的に発症する場合(primary)と後天的に発症する場合(secondary)とがあるが,おのおの症例において腎尿細管上皮細胞のいかなる代謝が障害されているかが不明であるために,原発性の尿細管の機能障害なのか,ほかの遣伝性疾患の一部分症としての尿細管の続発性機能障害なのかが解明されていない症例が多い.臨床的には再吸収されるべき物質の尿中への異常出現,あるいは分泌によって排泄されると考えられる物質の異常出現が見られるときに,腎尿細管転送異常と考える必要が生じる.
とくに再吸収機能の旺盛な近位尿細管の異常として,アミノ酸の再吸収不全・ブドウ糖の再吸収不全・リン酸の再吸収不全などに由来する疾患がそれぞれ単独に尿細管異常としての疾患単位を形成するとともに,これらに加えて重炭酸の再吸収不全が随伴し,尿細管の多発性障害となって一臨床疾患単位を形成し,Fanconi症候群と診断される場合が多い.つぎに尿の濃縮過程に重要とされている髄質部ネフロンの異常は,多飲多尿をきたす疾患の原発部位となり,一次的障害にせよ,二次的障害にせよ,ADH不応症をきたす疾患を形成する.K喪失性腎症や腎性尿崩症がその例としてあげられる.
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