今月の主題 肺の炎症性疾患—最近の動向
肺の炎症性疾患の変遷と問題点
滝沢 敬夫
1
Takao TAKIZAWA
1
1東京女子医科大学・内科I
pp.324-325
発行日 1980年3月10日
Published Date 1980/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216427
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肺感染症とその起炎菌の変遷
私が大学を卒業したのは1952年のことであるが,入局した内科は呼吸器疾患を標榜するだけあって,入院患者のおおよそ90%は呼吸器疾患患者,それも肺結核患者によって占められていた.SM, PASがようやく結核診療に用いられる一方,人工気胸療法や気腹療法がさかんに行われているころであった.
その当時,肺結核を除く炎症性肺疾患としてはまず大葉性肺炎(クルップ性肺炎)が代表的なものであり,悪寒戦懐にともなって高熱が稽留し,やがて急激な解熱(分利)に終る定型的な臨床経過は,聴診上の捻髪音(Crepitatio indux et redux)や,充血期に始まり肝変期を経て融解期に終る病理形態像とともに,筆者ら学生がくり返し習得させられた肺炎の病態であった.他方,肺炎の原因菌としては肺炎球菌が主たるものであり,第37回日本内科学会宿題報告、柴田教授の「肺炎の臨床」にあっても,大葉性肺炎,小葉性肺炎を含めて肺炎の原因菌はその83.7%が肺炎球菌(残りの大部分はレンサ球菌)であったと報告され,大葉性肺炎のみに限れば実に90%以上が肺炎球菌によるもので,原因菌未確定症例をみることは極めて稀なことであった.
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