臨時増刊特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第2集
VIII.血液化学検査
91.アンモニア窒素
高橋 善弥太
1
,
吉田 洋
1
1岐阜大第1内科
pp.1844-1845
発行日 1979年10月20日
Published Date 1979/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216195
- 有料閲覧
- 文献概要
異常値を示す疾患
肝性昏睡の起因因子の一つとしてアンモニアが関係していることは今日常識となっている.血中アンモニアの起源としては腸管,胃,腎,筋肉,白血球,皮膚などがあげられる,腸管内では細菌によるアミノ酸の分解によりアンモニアが生じる.また,体内で合成された尿素の1/4は腸肝循環を行っており,この腸管経路で腸管ウレアーゼによる分解で生ずるアンモニアは1日4gといわれている.これら生じたアンモニアの処理機構は肝の尿素サイクルが第一であるが,筋肉でもグルタミンの合成経路などでアンモニアが処理される.
猪瀬型肝脳疾患,Eck瘻術後などの短絡型肝脳疾患では,腸管より吸収されたアンモニアが肝で代謝されず大循環中に入り,海馬などの大脳辺縁系に働いて興奮,情動行動の異常,健忘,羽ばたき振戦,唾液分泌の亢進などの症状を起こし昏睡に陥る.しかし,劇症肝炎では血中アンモニアは中等度の上昇しか示さないこと1)や,昏睡の発現と血中アンモニア濃度との相関がそれほど高くないことなど,肝性昏睡のすべてを高アンモニア血症で説明することはむずかしい.この点について低級脂酸2)やメルカプタンがアンモニアの毒性を増幅させるためであるという考え方もある.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.