今月の主題 腸疾患の臨床
回盲部病変
回盲部病変の鑑別診断
長廻 紘
1
,
藤盛 孝博
2
1東女医大消化器病センター
2埼玉医大病理
pp.1174-1175
発行日 1979年8月10日
Published Date 1979/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215999
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はじめに
消化管で異なる径,機能をもった2つの構造が接する部分は機能障害,炎症,腫瘍の好発部位とされる1).回盲部も例外でない.回盲部は径の細い回腸と太い大腸が端側に接し,かつ虫垂の存在もあって構造が複雑であることと,病変の種類が多いことによって臨床上重要な部位である.
回盲部の注腸X線検査には,構造が複雑で描写読影がむずかしいうえに,以下のような制約がある.第1に泥状〜液状の残査があることが多く,このためバリウムの濃度が低下し,粘膜壁への付着が悪い.第2に上行結腸は解剖学的に半月ヒダが大きく,回盲部からのバリウムの除去がむずかしい.第3にスクリーニング検査では,病変の多い左側大腸を重視するため,全体のバリウム量は少なめになりやすい,肛門から最も遠い大腸部位である回盲部はコロノスコープの挿入も必ずしも容易でない.この2つの検査法がむずかしいことに関しては小腸がさらに上をいくが,病変の種類,頻度の点で,小腸は回盲部に比べて重要性は劣る.このような特徴をもった回盲部の検査においては,単に検査技術のみではなく各種疾患に対する深い理解が求められる。回盲部の診断が十分にできるようになれば,いろいろな意味で大腸診断学の"上がり"といえる.
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