演習・放射線診断学 CTスキャン読影のコツ・1
脳血管障害
町田 徹
1
1東大放射線科
pp.1071-1078
発行日 1979年7月10日
Published Date 1979/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215975
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はじめに
脳血管障害はわが国の死因の首座を占め,諸外国に比しても著しく高い死亡率を示す.またその発症は通常急激で,たとえ死に至らない場合でも重大な後遺症を伴うことが多く,早急なる対応が要求される.一方脳血管障害は,血管の破綻による出血性変化と血管の閉塞による梗塞性変化とに大別され,これら二者を鑑別することは治療方針の決定上きわめて重要である.しかし,臨床上,神経学的手技のみでは両者の鑑別に困難を覚える場合も少なくなく,脳シンチグラムや脳血管造影などの従来の神経放射線学的検査法を用いても,鑑別診断は必ずしも容易なことではなかった.
近年のコンピュータ断層(CT)の導入により脳出血と脳梗塞とは一層正確かつ簡単に鑑別されうるようになってきた.CTはわずかなX線吸収値の差異を画像として再現するために,急性期の血腫は高吸収値として,陳旧性梗塞は低吸収値として描出される.もちろん,CTが脳血管障害の診断に万能であるというわけではない.血管障害は一般にそうであるが,変化が急速であることから,ある特定の時期に行われたCTでは他疾患と紛らわしい像を呈したり,所見を有さない場合がある.逆にいえば,脳血管障害のCT診断は時間的な要素を抜きにしては行いえない.
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