今月の主題 血栓とその臨床
血栓成立のメカニズム
血流と血栓
磯貝 行秀
1
1慈恵医大第3内科
pp.822-824
発行日 1979年6月10日
Published Date 1979/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215906
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血流と血栓形成の問題点
生体内の血管の種類,部位および形状(分岐,彎曲,狭窄など)によって,血流速度,血管径,圧力勾配,血液粘度,ずり速度およびReynolds数など血液レオロジー的パラメーターはそれぞれ相違しており,一様ではない.同様に,血液の流れも,たとえば動脈では血球成分のうち,赤血球は血管の中心軸に集合する傾向(軸集中化現象)を示し,血小板は血管壁近傍を高い濃度で流れているといった分布の不均一性が認められている.しかしながら,このような状況下でも血栓形成の部位あるいは血管病変の発現区分は比較的規則性が認められているので,血流のバイオメカニクスの関与がかなりの重みをもっており,最近大きい関心をひいている.
血液の流れが緩徐〜停滞すると血管内凝固を誘発しやすいが,一方,流れの比較的速い部位でも血栓が形成される.前者の血栓生成は静脈でみられ,後者は動脈で認められており,血管内膜の損傷,血小板機能および凝固・線溶能の相互作用が成因的に大きく寄与している.また,微小循環系の血栓性閉塞病変の成り立ちには,血液粘度,赤血球集合(sludging)および赤血球変形能などが重要となる.いずれにしても,最近の凝血学の進歩をin vivoの血栓形成の動態にいかにあてはめてゆくか,換言すれば血栓に対する血液レオロジー(血液と血管に関する流動と変形の科学)的アプローチと凝血学的研究の協調との有機的連携をいかに計るかが非常に重要となる.
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