紫煙考
タバコと血流
浅野 牧茂
1
Makishige ASANO
1
1国立公衆衛生院・生理衛生学部
pp.1638-1641
発行日 1980年10月10日
Published Date 1980/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216732
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●喫煙の急性心臓・血管作用とニコチン 喫煙時には,喫煙者本入の自覚の有無にかかわらず,かなり著しい心臓・血管系機能の変化が起こる.これは主としてタバコ主流煙中から吸収されたニコチンの作用によると考えられている.図1のように,1),シガレット喫煙時の血中ニコチン濃度変化と,心拍数および血圧の変化の平行関係,およびこのシガレット主流煙中ニコチン量と対応する量のニコチンを,喫煙ペースに合わせて分割静注した場合の同一各指標変化の平行関係が調べられており,少なくともニコチンが主役を担っていることは確かである.
吸収されたニコチンは末梢自律神経系の神経節に作用し,その末梢の支配臓器に刺激効果を現わすが,心臓、血管系機能では,一般に交感神経刺激効果で心拍増加,血圧上昇のほか,心拍出量,1回拍出量,心収縮速度,心筋収縮力,冠血流,心筋酸素消費,不整脈発生,心電図変化などが増加すると報告されている2).このような急性作用は,もちろん,主流煙中のニコチン量の多少あるいは有無によって強さが異なる.
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