特集 老人の施設ケアシステム
ホスピスケアの現状と将来
前田 信雄
1
Nobuo MAEDA
1
1国立公衆衛生院衛生行政学部
pp.603-608
発行日 1982年9月15日
Published Date 1982/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206581
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ホスピスという施設,ホスピスケアという活動や事業について各地で多くの試みがなされるようになったのはごく最近である.1970年代の後半から米国で急速に普及し,日本でも1980年代に入って,少数ではあるがホスピスケアを正面から掲げる事業が組まれるようになってきた.まず考え方が先にあって,その新しい考え方に合わせて実際事業が実施に移されてきたというよりも,先に先達による個別的な実行がとりくまれ,その事実や経験に対して種々の考え方が出され整理されてきたのがホスピスケアの特色である.
しかし,米国でのホスピスとホスピスケアの施設と組織は200を越え,創始者の立場にある英国でもその数30を越えるようになった.米国連邦政府やブルークロス(非営利入院健康保険会社)がその実施に一部財政援助をし,英国でも国民保健事業からの費用支払いがなされるようになった今日,行政や研究者の間でも「ホスピスの在り方」「ホスピスケアの評価」が堀り下げて検討されるようになってきた.とりわけ,米国の老年学会や公衆衛生学会において大きくとりあげられるようになってきた.従来狭くホスピスという施設を中心に考えてきたのを変えて,ホスピスケアという末期患者に対する総合的な援助の考え方が共通関心となってきている.
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