今月の主題 実地医のための臨床細菌学
注意しておきたい感染症
恙虫病
山作 房之輔
1
1水原郷病院内科
pp.1000-1001
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207946
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はじめに
わが国の恙虫病は,秋田県雄物川,山形県最上川,新潟県信濃川,阿賀野川流域の堤防と川の間や中洲の草叢でRickettsia orientalisを保有するTrombicula akamushiの幼虫に刺されて,主に夏に発生する死亡率の高い重篤な熱性疾患として古くから知られ,古典的恙虫病と呼ばれる.一方,本症は日本,インド,豪州を結ぶ三角形の地域に広範に存在してscrub typhusと呼ばれ,第二次大戦中に日米両軍で数万人が罹患し,死亡率は地域により0.6から35%の大差を認めた.
戦後,昭和23年および29年秋に富士山麓演習地に野営した米軍兵士に集団的に本症が発生し,患者,野鼠と寄生していたT. scutellarisからR. orientalisが分離された.伊豆七島で10月下旬から1月中旬に多発する熱性疾患もT. scutellarisに媒介される本症と判明し,七島熱と名付けられた.
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