今月の主題 実地医のための臨床細菌学
問題になってきた起炎菌の分離・同定
無芽胞嫌気性菌
上野 一恵
1
1岐阜大微生物学
pp.954-960
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207939
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はじめに
嫌気性菌による病気で,従来よく知られているものは破傷風,ガス壊疽,ボツリヌス食中毒,放射線菌症などである.近年になって,ウェルチ菌食中毒と無芽胞嫌気性菌による感染症が重視されてきた.とくに無芽胞嫌気性菌はopportunistic infectionの起因菌として重要になってきた.無芽胞嫌気性菌はヒトの皮膚や粘膜の正常細菌叢を構成する主要な細菌で,今日,感染症の起因菌として問題にされている嫌気性菌は,これらの無芽胞嫌気性菌による内因性感染症である.
従来,無芽胞嫌気性菌の大部分は病原性がないか,または極めて弱いと考えられていた.したがって,このような細菌が感染症を引き起こすのには,細菌側の要因よりも生体側の要因が重要な役割を果たしている.生体側の要因とは,たとえば悪性腫瘍,自己免疫疾患,糖尿病などの原発性疾患や生体の器質的,機能的障害などをあげることができる.また化学療法剤の不適当な使用,紫外線照射,X線照射,免疫抑制剤などの投与もその素地を作りだすことになる1).
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