今月の主題 急性期脳卒中の臨床
脳卒中急性期診療の動向
亀山 正邦
1
1京大老年科
pp.6-7
発行日 1978年1月10日
Published Date 1978/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207691
- 有料閲覧
- 文献概要
はじめに
脳卒中は高血圧,動脈硬化,血液異常などの疾患や病態が,脳というきわだった臓器に集約してあらわれた状態である.すなわち,脳卒中はあくまでも全身疾患の部分現象と解されるべきである.急性期脳卒中例の診療にあたっては,このことはとくに強調される必要がある.脳卒中発作という派手な現象に目をうばわれて,背後に潜む問題を忘れがちになるからである.
脳血管障害の形態学的診断は,CTスキャンや脳血管撮影,RIシンチグラフィーなどの導入によって,現在はきわめて容易かつ確実になってきている.形態学的のみならず,ある種の物質の同定も可能になりつつある.しかし,これらの診断法はあくまでも補助診断であって,それのみで患者の状態が正しく把握できるとは限らない.検査成績によってどこまで正確に患者の病態が説明されるか,その判断は臨床家の臨床的な能力に依存する.たとえば,一過性脳虚血発作(TIA)の症例に脳血管撮影を行って,内頸動脈と椎骨・脳底動脈の両方に狭窄ないし閉塞所見が得られたとき,TIA発現にいずれの血管系が関与しているかを決めるのは臨床所見である.CTに描出されない病巣が現実の脳血管発作の原因となっていることも少なくない.また,CTスキャンやRIシンチグラフィー,さらには脳血管撮影においてさえ,いつでも,どこにおいても施行しうるというわけにはゆかない.脳卒中の臨床の基本を身につけることが重要であろう.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.