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脳梗塞の血栓溶解療法:理論背景と歴史的経緯
脳梗塞急性期には不可逆的損傷を被った虚血巣中心部の周囲に,機能障害をきたしているが不可逆的損傷に至っていない虚血性ペナンブラが存在し,時間経過とともに梗塞巣へ移行する(図1).血栓溶解療法は血管内の病的血栓を溶解し,途絶した脳血流をごく早期に再開させ,不可逆的障害を回避することを目的とする.
血栓溶解療法は,使用する薬剤や閉塞血管へのアプローチ法に違いによりいくつかの方法に分類されるが,現在は遺伝子組み換えによる組織型プラスミノゲン・アクティベータ(recombinant tissue-type plasminogen activator:rt-PA)の経静脈的投与が一般的に行われている.この薬剤は,血栓親和性が高く全身投与であっても病的血栓を選択的に溶解できるとされる.日本では1990年代初頭に,世界に先駆け良好な治療成績が報告された1).しかし使用薬剤:デュテプラーゼの特許権をめぐる問題により,開発が頓挫した経緯がある.その後,1995年に米国National Institutes of Neurological Disorders and Stroke(NINDS)試験2)において,発症3時間以内の脳梗塞に対するアルテプラーゼ0.9mg/kgの有効性が証明された.翌1996年に米国で認可された後,他の主要国でもrt-PA療法は脳梗塞急性期に是非検討すべき治療法として相次いで承認された.しかし日本では長らくrt-PAが使用できない時代が続き,2004年の脳卒中治療ガイドライン3)でも,rt-PAの静脈内投与は「保険適応外」という但し書きを付けた上で「グレードA」と推奨される,という状況にあった.
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