臨時増刊特集 診断基準とその使い方
IX.血液・造血器疾患
不安定血色素症
柴田 進
1
1川崎医大内科
pp.2130-2132
発行日 1977年12月5日
Published Date 1977/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207617
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概念
不安定血色素症の概念は次のように要約される.①遺伝により分子の立体構造を安定させることができない根本的欠陥を持つ病的ヘモグロビンを産生し,②それが赤血球内部環境によって与えられる保護を全面的に受けても,それだけでは足らず,生成すると間もなく変性して不溶性の沈殿物または封入体になって析出し,赤血球の内部を撹乱し,膜を損傷する.③そのためにこのようなヘモグロビンをつくる骨髄の有核赤血球の一部は造血の途中で変性に陥って姿を消し(無効造血),その内容である病的ヘモグロビンは破壊され,その持っていたヘムは異常な代謝経路によってdipyrroleになり尿に排泄され,尿を醤油色に着色する(dipyrroluria).また④たとえ赤血球系の細胞が骨髄内で有核赤血球を経て赤血球となり,末梢血液に送り出されても,すでに損傷を受けているから,ただちに脾臓(網内系)に抑留されて破壊され,正常な寿命(120日)を維持できず,溶血性貧血(脾腫あるいは脾機能亢進症を随伴する)をひき起こす.以上の4条件を満足させる病気が不安定血色素症である.
不安定血色素症は,わが国ではHbM症とともに症状を呈する異常血色素症(異常な分子構造のグロビンをもつヘモグロビンを生成する遺伝病)の最も重要なものとしてあげられるべき疾患である.そして最もはやく異常血色素症として発見された病気の一つである.
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