私の経験例
Factitious Hypoglycemia
田中 亮一
1
1阪大病院第4内科
pp.1663
発行日 1977年12月5日
Published Date 1977/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207476
- 有料閲覧
- 文献概要
患者は24歳の女性で,職業は看護婦.主訴は意識消失発作.家族歴では父が脳出血にて死亡.既往歴として18歳虫垂切除.現病歴としては,昭和50年12月より食思不振出現,6カ月問で40kgから32kgと8kgの体重減少あり,近医を受診して精査受けるもとくに異常なく,心因性食思不振症といわれた.昭和51年12月頃より食欲改善し,むしろ亢進状態となる.昭和52年1月頃より空腹時ふらつき感あり,その症状は摂食により改善した.昭和52年2月9日早朝,動悸,四肢のシビレ感あり,近医受診後,昼頃意識消失.この時の血糖値13mg/dlにて,ブドウ糖の静注を受け意識回復した.低血糖の原因精査のため入院.入院時現症は身長157cm,体重41kg,脈拍64/分整,血圧110/64mmHg,その他理学的所見にてとくに異常を認めなかった.一般検査にて,検尿,検便,検血,血沈,血液化学,肝機能,チセリウス,胸・頭部単純,心電図などはすべて正常範囲であった.ついで,低血糖の原因精査のために諸検査を施行した.入院翌日の100gOGTTにて空腹時血糖は25mg/dl,5時間まで測定したが頂値50mg/dlの平坦型であり,IRIは前値25μu/ml,頂値40μU/mzを示した.空腹時の血糖/IRI比は1であり,Shatneyらは,その比が1以下の時はインスリノーマの診断根拠となるとしており,既往歴よりもインスリノーマの存在が強く疑われた.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.