今月の主題 DICとその周辺
血管内凝固の成因
線溶のしくみ
風間 睦美
1
1帝京大第1内科
pp.804-806
発行日 1977年6月10日
Published Date 1977/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207222
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線溶系の構成
生体の止血機能を保持する諸要因のうちで,凝固系と線溶系はしばしば対比され,またそれらの相関が論じられる(図1).これらは血漿蛋白酵素の特異的連鎖反応系であって,共に最終的基質はフィブリノゲンである.線溶系の主役はプラスミンであるが,この蛋白分解酵素はフィブリノゲンやフィブリンに強い親和性をもち,フィブリン体分子のC末端より逐次これを加水分解して小分子の分解産物を生ぜしめる1,2).
生理的状態において線溶機能は一定のレベルを保ち,凝固機能や血小板機能と呼応して正常の止血機能を営むが,線溶が異常亢進すれば血流中のフィブリノゲン分解や生理的止血血栓の溶解などが異常に進行して止血能の低下をきたし,これが線溶の異常亢進による出血傾向の最大原因と目される.しかし蛋白分解酵素としてのプラスミンは,さらに他の血漿蛋白にも作用する.すなわち比較的不安定な凝固第V,第VIII因子の活性を低下せしめ,カリクレインを活性化することによってキニノゲンをキニン分解し,また血小板機能を障害するなど,生体内の線溶の亢進はフィブリン体分解のみならず,凝固系・血小板・血管系などに多面的な影響を及ぼすものである.
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