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消化管病変と線溶能
近藤 元治
1
1京府医大第3内科
pp.159-160
発行日 1977年1月10日
Published Date 1977/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207052
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18世紀に,急死した屍体の血液が凝固せずに,流動性を保つことから知られるようになった線維素溶解現象(fibrinolysis)は,生体内に生じた血栓を融解するという重要な生体防御機構の一つで,血中に前駆物質として存在するplasminogenが,血管壁や組織から遊離されるactivatorの作用で活性型のplasminとなり,これがfibrinの溶解に働くものである.
各種病変に際して血中線溶能に亢進をみることは,出血性疾患,炎症性疾患,肝障害,悪性腫瘍,あるいはショックにおいて知られ,このため血中の線溶能を測定することで,病変の状態を把握しようとする試みがなされてきてつる.ところが,血中線溶の測定にはいろいろの方法があること,線溶能が麻酔,手術など外科的侵襲により上昇すること,さらにplasminは,血中に存在するinhibitorにより,容易に不活化されるため,末檜血中の線溶能が病変を正確に反映していない可能性もあり,その解釈はむずかしい.これに対し,組織病変に際し組織の線溶をみる方法も考案され,ロダンカリやKC1による抽出法,あるいは凍結切片を用いた組織化学的な方法で,その活性が検討されている.従来,組織activatorが少ないために,あまり注目されていなかった消化管病変でも,粘膜の線溶,あるいは胃液中の線溶能の動きをみる考え方が生まれてきて,消化管病変の研究は大きく進歩をとげた.
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