忘れられない患者
Sheehan氏症候群の思い出
渡辺 亮
1
1青木町医院
pp.1605
発行日 1976年11月10日
Published Date 1976/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206849
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現在,Simmonds氏病,Anorexianervosaなどという病気は,はたしてどの程度存在するのであろうか.思えば私の大学在局時代(それも20年以上前だが),PluriglandlareInsuMzienz,Simmonds氏病なる診断名が乱用されていたように思う.
その頃私は某内科の1研究生であった.某病院内科より"肝障害,倦怠感"の著しい婦人(35歳の晩婚の人)患者が紹介され,偶然私が担当することとなった,形のごとく内科理学的所見をとったところ,腋毛の脱落,るいそう157cm,38kg,低血圧90-50,顔面蒼白などを認めたが,とくに肝も触知せず,腎のバロットマンもない.下腿にも浮腫を認めなかった.一応,一般内科検査を施行したところ,X線はいわゆる滴状心で肺も異常ない.心電図は,いわゆる低電位であった.血沈6/時,貧血(-),Hb 84%,血清蛋白7.0g%,尿タンパク(-),糖(-),ウロビリノーゲン正であった.困りはて第2段階の検査に移った.BMR-25%,血糖値(坂口食)vor 60mg%,2時間,3時間値とも100mg%以下であったが,血清Na,K値は異常なく,血液像は好酸球7%であった.肝障害はBSP 30分0%,ZTT,Co反応,MGいずれも異常なく,再び胃レントゲン像の精査に移ったが,いわゆる胃アトニー像のみであり,胃液はヒスタミン感性であった.
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