今月の主題 腎不全の病態と治療
臓器面からみた臨床像
中枢神経
宮原 正
1
,
平山 隆勇
1
,
豊原 敬三
1
1慈恵大第3内科
pp.476-477
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206505
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中枢神経症状は,尿毒症における重要な臨床症状のひとつで,慢性腎炎の際にみられる脳症状についての最初の報告は,1839年,Addisonによって行われた.その後,Baker and Knutson,SchreinerあるいはTylerその他の研究者により尿毒症の精神神経症状について詳細な報告が行われたのは今世紀半ば以後である.
透析療法施行前の時代と普及後とでは,尿毒症の臨床症状に明らかな相違がみられる.透析が治療法として行われる以前の尿毒症患者には,多彩な精神神経症状が認められているが,ほぼ1962〜3年頃から,すなわち,透析が広く行われるようになってから様相が一変した.当初は不十分な透析下の延命のために精神神経症状がかえって高頻度にみられたが,透析方法の改善の結果,かつてみられたような症状に遭遇するchanceはごく稀になった.したがって,今日ではuremic encephalopathyが透析を行っていない尿毒症例にみられることは昔と変わりないが,適当な時期に透析が行われるので,高度の中枢神経症状を呈することは少ない.このように,透析により尿毒症症状の顕著な改善,生存期間の延長,さらには多数の社会復帰例がみられているが,逆に透析により惹起する,しかも上述のuremic encephalopathyと異なった中枢神経症状が認められている.
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