今月の主題 腎不全の病態と治療
トピックス
Uremic toxins
山田 多啓男
1
1城西歯科大内科
pp.444-445
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206492
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Uremic toxinの研究はcentury old searchといわれるように,その研究の歴史は古い.尿に排泄されるべき物質が腎不全のために排泄されず蓄積し,それが尿毒症の病態を形成するという考えは最も明快であり,早くから研究の対象となった.しかし,尿素,フェノール,グァニジン誘導体にいたるまで多くの物質が検討されてきたが,未だ結論的なものを得ていない.これは,腎不全患者の血中から見出された物質の毒性を証明するのは,必ずしも容易なことではなく,また尿毒症症状の多くが水電解質代謝異常,酸塩基平衡の異常,エリスロポエチンなどのホルモン分泌異常などで説明可能であるため,その存在を疑わしめたためである.しかしながら人工透析が確実な腎不全の治療手段として定着するにつれ,uremic toxinの存在を疑わしめる事実が明らかになり,この研究は再び新鮮なリサーチテーマとなってきた.それは,①透析により滲透圧異常,電解質異常,酸塩基平衡異常などを是正しても改善しない症状(脳波所見,高血圧の一部,耐糖能低下,抗体産生能低下,細胞性免疫能の低下,貧血,出血傾向,骨代謝異常)がある.②血液透析例と腹膜透析例で,透析される物質の膜透過性の相違によると思われる症状の違いがある.③血液透析の週あたり頻度や透析時間,面積の相違による分子量別クリアランス曲線の違いが,やはり症状(末梢神経伝導障害など)の深さと関連するなどである.
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