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歴史的背景
この方面における最初の報告は,1872年Kaposiによる2例の報告1,2)が嚆矢とされる.以後Pernet(1908)3),Libman(1911)4),Low(1920)5),Goeckerman(1923)6),Keefer(1923)7)らによって追加され,その病態は次第に明らかになりつつあったが,1924年LibmanとSacksによるnon bacterial form of verrucous endocarditisに関する報告8),および1932年GrossによるLibman-Sacks型心内膜炎とSLEとの関連に関する詳細な報告9,10)が出るに及んで事実上の歴史が始まったとみてよい.以来,とくにリウマチ性心炎,細菌性心内膜炎との類似点,相違点が臨床的あるいは病理学的両面から検討され,一方におけるSLEに関する全体的病態像の解明に関する研究とあいまって,その病像が次第に浮き彫りにされるに至った.その結果,前記Libman-Sacks型心内膜炎のみならず,心嚢炎,心筋炎,あるいは冠動脈における血管炎,およびそれに由来する心筋硬塞などの病変の存在が明らかにされた.
一方,SLEの治療面においては,副腎皮質ホルモン剤の登場とともにこれが大きな役割を果たすこととなり,各種病変の抑制と延命に良好を得ることが諸家により実証された.この結果,心病変そのものもまたステロイド剤の投与により大きな修飾をうけることとなり,ステロイド剤登場以前の症例に比して,Libman-Sacks型心内膜炎や心囊炎の活動型病変は抑制され,代わりに高血圧,うっ血性心不全,冠動脈狭窄などを示す症例が増加したという11).一方においては,これらの病態の変化をステロイド剤の故に帰することは必ずしも妥当ではないとする意見12)もあるが,いずれにしても,本症に伴う心病変の病態が,1950年頃を境にして相当の変化を生じたことは事実のようである.
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