今月の主題 肺癌—その理解と対処のために
治療
放射線療法
橋本 省三
1
1北里大放射線科
pp.1825-1827
発行日 1975年11月10日
Published Date 1975/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206302
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肺癌治療における放射線療法の位置
わが国で放射線治療の指導的地位にある国立がんセンターにおける1968年までの肺癌の5年粗生存率は13%と梅垣が報告しているごとく,肺癌の放射線治療成績は頭頸部や子宮のそれに比してはるかに及ばない.それは早期肺癌を放射線療法で根治させるチャンスが少ないことにもよるが,延命効果としては十分な効果をあげ得るし,血痰・咳嗽・呼吸困難・胸痛・全身状態の改善には期待できるものがあるので,手術適応にならない進行症例にも照射療法は積極的に試みるべきである.治療成績としては一次的にはかなり良いものがあり,再燃や転移病巣に照射を行っても寛解を得ることができて,昔ならば最初に入院してそのまま死亡退院するものが,再々の入院によりそれなりの効果を得て,4〜5度目に死の転帰をとるというようになってきている.これは高エネルギー照射装置と治療技術の進歩,癌化学療法の進歩によるものであって,多角的な治療法のコンビネーションの成果であり,長期生存の治療成績はじりじりと上昇を続けて行くことであろう.放射線照射を行う限り,正常組織の障害を避けて腫瘍のみを絶滅させることは不可能であり,照射の影響を腫瘍の周囲組織について常に検討を加え,許容範囲ぎりぎりの線までもっていって勝負するのが放射線療法の立場である.
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