今月の主題 肺癌—その理解と対処のために
X線診断
X線像と組織型
西脇 裕
1
,
鈴木 明
1
1国立がんセンター・内科
pp.1778-1782
発行日 1975年11月10日
Published Date 1975/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206290
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はじめに
肺にはいくつかの異なった上皮組織があるために,それらを母地として発生する肺癌には組織型の異なるものが含まれる.これは単に組織型が異なるというだけでなく,発生部位,進展・転移様式,治療に対する反応,予後などにも重大な差異があるため,組織型についての考慮なしに肺癌患者を診療することはできない.しかし,これは単に組織型を知ればよいというものではなく,進展の時期を十分に把握しないなら,適切な治療の選択に結びつかない,つまり,治療前に種々の情報を十分に分析することにより,その組織型と進展時期・範囲を十分に把握することが必要となってくる.この点について,胸部X線単純写真・断層写真に現れた異常影と,気管支・肺血管・肋膜およびリンパ節などの肺の既存構造との関係を詳細に分析することは,このような目的に極めて重要な役割を果たすことができるものである.
腫瘍の発生部位・進展様式と"気管支"との関係を考えると,腫瘍が原発性であるか,転移性であろか,悪性であるか,良性であるかの別なく,"気管支"の外から内へ進展するものと,気管支の外から内へ進展するものとに分けることができる,ここでいう"気管支"とは,肉眼的あるいはX線上とらえられる程度の太さの気管支である.これに肺血管系と肋膜などの変化を加えると,肺腫瘍のX線像をかなり正確に分所すること,すなわち,腫瘍の進展様式を把握することができ,それに基づいて,その進展時期と組織型を推察することが可能となる1〜4).
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