今月の主題 消化管潰瘍—診断および治療の現況
消化性潰瘍の治療
心身医学的療法
並木 正義
1
1北大第3内科
pp.1076-1077
発行日 1975年6月10日
Published Date 1975/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206085
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消化性潰瘍とストレス
消化性潰瘍は,従来から心身症の代表的疾患とされている.心身症とは大ざっぱにいって,患者を心身両面から全体的なものとしてみつめ,取り扱うことの必要性がとりわけあり,またそうしなければ,良好な治療効果の得られない疾患と思えばよい.消化性潰瘍は,こうした疾患の代表的なものだというわけである.つまり,本症は,胃や十二指腸の局所的疾患ではなく,心身を含めた全身病としての考慮をはらわなければならないものといえる.
実際に消化性潰瘍の発生や再燃・再発にストレス,なかんずく精神的ストレスが,密接な関連性を有することについては,多くの医者が経験的に知っているし,最近では,一般の人々もストレスとかストレス潰瘍といった言葉を,あたかも流行語のように用いており,潰瘍の発生や再発に精神的要因がなんらかのかたちで関与することを,それとなく感じとっているものも少なくない.複雑な現代社会においては,さまざまなストレス因子が人間を悩ましていることは事実であり,このストレスによってひきおこされる神経性,体液性のアンバランスが,潰瘍の発生や再発に深い影響をもたらすことは十分考えられるところであり1,2),一方,それに対する適切な調整や対策が,治療上重要な意味をもつものであることもうなずける。このように考えるとき,消化性潰瘍の治療における心身医学的アプローチの位置づけは,おのずから明らかとなる.
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