研究
褥婦の心身医学的観察
伊集院 康熈
1
,
前畠 良裕
1
,
徳久 登
1
Yasuhiro Ijūin
1
1鹿児島大学医学部産科婦人科学教室
pp.329-334
発行日 1969年4月10日
Published Date 1969/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204024
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はじめに
生体が円滑に機能を発揮するには,自律神経系と内分泌系はきわめて重要な役割をもつとされているが,婦人では性腺機能の変換期にあたる思春期,月経前後,妊娠時,産褥時,去勢後,更年期などで,一見,自律神経失調様のいわゆる不定愁訴を訴えることが多いことから,性腺機能と自律神経機能との関係は従来から種々検索され6,13,24),その間の寄接な関連性が指摘されている。ところがこのような時期では,内分泌的身体的変化による女性機能の変化やそれに伴う環境適応などへの不安から,精神的にもきわめて不安定な状態におかれているため,これが心因として作用し,不定愁訴の発現に影響することは容易は想像されるところである。また同じような条件下にある人でも,愁訴の表現や程度にはおのずから差があるので,心因と関係の深い性格的因子も考慮される8〜12,22)。
そこで本学神経・精神科を受診し,神経精神性疾患と診断された婦人689例の発症と性腺機能との関係をみたところ,表1のとおりで,性腺機能変換期に発生した患者19,27)は,175名(25.3%)にもおよび,神経・精神的因子と性腺機能とがいかに深い関連性をもつかが判明した。
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