Japanese
English
今月の主題 糖尿病への新たなる対処
知っておきたい合併症
神経因性膀胱
diabetic neurogenic bladder
藤原 昇
1
1浜の町病院・内科
pp.768-769
発行日 1975年4月10日
Published Date 1975/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205989
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- Abstract 文献概要
糖尿病患者で自然排尿が停止したとき,各種の原因による神経損傷,局所性尿路疾患による場合を除けば,糖尿病性神経因性膀胱が想起される.いうまでもなく糖尿病性神経障害は糖尿病患者の大多数に何らかの異常を示し,多彩な症状,中でも自律神経症候を伴いやすいところに特徴があるが,これに基づく膀胱機能障害を糖尿病性神経因性膀胱と呼び,Cord bladder,Atonic bladderの別名がある.Marchal de Calvi(1864)により初めて記述されたといわれ1),その頻度は糖尿病者の1〜2%に過ぎず,比較的稀な合併症と考えられてきた.ところが何らかの排尿障害を訴えるものは意外に多く,末梢神経障害をもつ糖尿病患者で83%に膀胱機能低下を認めた報告2)もあり,潜在性異常は相当な数に達するものと推測される.
神経組織学的には実験糖尿病で下腹・骨盤神経のみならず,腰・仙髄に脱髄変性を認めており3),その病因については古くから血管障害あるいは代謝異常などが考察されているが,未だ明確でなく,ストレスに求めるものもある,本症が糖尿病の初発症状であったとする報告もあるが,一般に罹病期間の長いものほど他の神経障害を含めて高率に出現し,代謝の破綻が顕症化の誘因となる症例が多くみられるのは事実であり,網膜症・腎症を合併しやすいことも病因解明の手がかりとして考慮されるべきであろう.
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