今月の主題 肝硬変—今日の視点
肝硬変をどう扱うか
肝硬変患者の社会復帰基準
太田 康幸
1
1岡山大第1内科
pp.894-897
発行日 1974年7月10日
Published Date 1974/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205493
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はじめに
肝硬変患者を社会復帰させようとする場合,われわれは以下のような前提条件の上に立っていることを考えておく必要があろう.まず第1は,患者自身が社会復帰を希望しているということ,少なくとも意識下にそういう希望をもっているという前提である,第2は,肝硬変患者では治癒ということは所詮期待できないまでも,機能の上では代償されるという前提に立っているということである.そして第3は,社会ならびに患者の家庭環境が患者の社会復帰を求め,援助ないし庇護するという前提である.患者は社会的には生産年齢であり,家庭では家族扶養義務をもつ年齢であることから,このあたりの事情は十分納得されよう.
したがって,肝硬変患者の社会復帰の基準を設けるということは,これらの前提条件をふまえた上で,ひとつの物指しを作ることであろう.そして当然のことながら,この種の基準は絶対的なものではなくて,おおよその目標を設定するという性質の内容にとどまることであろう,本稿では筆者の自験例から得られた資料と,昭和48年12月3日,第8回日本肝臓学会西部会でのパネルディスカッション,「肝硬変症の予後と社会復帰」において,パネリストたちが発表された成績を引用しながら,肝硬変患者の社会復帰の基準について述べてみたい.
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