ある地方医の手紙・19
詐病(malingering)
穴澤 咊光
1
1穴澤病院
pp.138-139
発行日 1974年1月10日
Published Date 1974/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205287
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W先生
6年前,私が米国南部のある医大の神経学教室に留学中のこと.定例水曜朝の症例検討会に,右足がきかない,という若い男の患者があらわれました.この男,ドタリ,バタリ,と渋面をつくって,いかにも痛そうに右足をひきつりながらあらわれ,なみいる医師やインターンに大げさなゼスチュアたっぷりに,自分の身の上話をしてきかせました.「私は米海軍の戦艦ニューヨーク号の乗組員で,ベトナム戦で手柄をたて議会勲章(日本の金鵄勲章に相当する最高名誉の勲章)を貰った勇士であります.私の乗艦は大西洋からエリー湖を通ってデトロイト港に回航され,私はそこで上陸して車で当地に向かったのですが,運転中急に道路がフワフワと浮き上がったかと思うと,急に右足が痛み出し,しびれてしまって……
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