Japanese
English
展望
詐病の精神鑑定と裁判所
Psychiatric Evaluation of Malingering and The Courts
西山 詮
1
Akira NISHIYAMA
1
1錦糸町クボタクリニック
1Kinshi-cho Kubota Clinic, Tokyo, Japan
キーワード:
Malingering
,
Evaluation
,
Criminal court
,
Civil court
Keyword:
Malingering
,
Evaluation
,
Criminal court
,
Civil court
pp.1145-1155
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102043
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はじめに
最高裁判所(以下は最高裁と略す)が扱った刑事事件と民事事件の各1例を掲げ,裁判所が詐病をどのように扱ってきたか,これら判例を法学者がいかに評価してきたかを概観し,わが国の詐病学の貧困な現状および向後の発展の必要を明らかにしたい。いくらか古典化しつつある判例に詐病学の観点から息を吹き込む試みである。
詐病に取り組む研究者はまれであるが,実際には,詐病は,裁判でしばしば現れまたは隠れた問題になり,裁判所もその取り扱いに苦慮している。そこへ「近年『心因性』ということばが流行し,割合的認定の手法で解決することが一般となったが,このことが,かえって,本来ならば民事訴訟で要求される証明度に達しておらず,請求棄却してもよい事案を中途半端に認容するなど,事実認定,特に因果関係の認定を甘くしている嫌いがある」12)とすれば,見逃すことはできない。
裁判官に詐病の認定まで求めるのは酷だと考える人12)もあるが,裁判官こそ最終的に詐病(か否か)を認定する職責を持った人である14)。当然,裁判官は詐病を認定することができなければならない。これに対して精神科医は適切な意見を提供できる準備をすべきである。
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