今月の主題 新しい臓器相関のとらえ方
臓器相関からみた症候群
腎と造血臓器
前川 正
1
,
白倉 卓夫
2
1群馬大第3内科
2東京都立養育院病院
pp.60-61
発行日 1974年1月10日
Published Date 1974/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205270
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腎は尿生成の重要な外分泌器官である.腎障害により、その機能が充分に果たせなくなると,生体にとって有害な尿素窒素やクレアチニン,その他の中間代謝産物か体内に蓄積する.このような病態では血球生成の場である造血臓器もなんらかの影響をうけると考えられている.一方,腎は赤血球生成に重要な役割を演ずる造血ホルモン,erythropoietin(Epo)の産生臓器でもある.
Epoは赤血球系細胞の最も幼若な血液幹細胞(ERC:erythropoietin responsive cell)に直接作用して,幹細胞から赤血球系細胞へ分化成熟させる作用をもっている.このホルモンの約90%は腎で産生されると現在考え、られているが,その産生速度は組織における酸素の供給と需要のバランスで調節されている.供給がなんらかの原因(Hb濃度の減少,心拍出量の減少,血中酸素含有量の低下,Hbの酸素親和性の亢進する異常Hb血症など)で低下したり,供給は異常ないのに需要が増加して相対的に供給不足となる(甲状腺機能亢進症)場合には,腎が敏感に酸素欠乏を感受してEpo産生を増し,これを血中に放出する.造血臓器に運ばれたEpoは骨髄細胞に働いて,赤血球系細胞の分化増殖を促して赤血球をより多く末梢血へ送り込む.
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