今月の主題 最近の老人病—臨床とその特異性
老人によくみられる症状—どう対処するか
夜間せん妄
稲永 和豊
1
1久留米大精神神経科
pp.2070-2071
発行日 1973年12月10日
Published Date 1973/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205222
- 有料閲覧
- 文献概要
夜間に起こるせん妄を夜間せん妄と呼んでいるが,この状態も基本的にはせん妄状態であって,昼間に起こるものとそれが起こる時間帯の違い以外には差異はないように思われる.しかしながら老人においてはとくに夜間にせん妄状態が起こりやすいことはよく知られている.
何故老人で夜間にせん妄が起こりやすいかは次のように説明される.夜間には明るさや騒音が減少し,もともと知覚機能が低下している老人では,認知能力の低下がますます起こり,一種の知覚遮断がひき起にされる.そのために夜間には幻覚が生じやすく,興奮,精神錯乱,妄想などが起こりやすくなる.認知の能力を低下させるような薬を与えると(たとえば睡眠剤など),夜間の症状を悪化させることがある.これは知覚遮断によるとする説であるが1),一方では脳内における代謝過程そのものも老人では変化していることによると考えられる.
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.