今月の主題 問診
患者別問診法
老人の問診のすすめ方
藤井 潤
1
1朝日生命成人病研究所
pp.690-691
発行日 1973年6月10日
Published Date 1973/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204756
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老人が来診したら,診察にかなり時間がかかるものとまず覚悟する.老人は動作がおそく,衣服の着脱などに時間がかかるばかりではなく,問診に時間がかかるのである.同じ老人でも,現在,社会的活動をしている人では,比較的容易に問診ができる.若い人に比べると,既往歴や現病歴が長いのは止むをえない.隠居をした老人や長期間寝たままの老人では,問診自体に手間どることが多い.社会との接触が乏しくなると,他人からの問いを理解したり,それに対する返答を表現したりする能力が低下してくる.
筆者の病院の外来では,初診時の診察時間に1人あたり20分の時間を用意してあるが,老人の患者の診察には30分を越すことがある.問診は理学的所見をとったり,検査を進めていくときの道標的役割をもっており,問診のできない患者,例えば非常に耳の遠い老人とか,高度の痴呆のある老人で,問診ぬきに診察してみると,問診の重要性をあらためて感ずる.問診なしに診察すると,灯なしに暗夜を歩くのに似た不安がある.
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